科学哲学のレポート2アウグスティヌスの時間概念と科学で使われる時間概念の違い

科学哲学のレポートその2です。

課題タイトルはアウグスティヌスの時間概念と科学で使われる時間概念の違いです。

今回はアウグスティヌスの時間論に関して。アウグス ティヌス 告白 (下) (岩波文庫 青 805-2)中心にかきました。

このレポートの参考文献はこの4冊。

≪参考文献≫

アウグスティヌス『告白(下)』 服部英次郎訳

村上 陽一郎『時間の科学』

和田 純夫 『プリンキピアを読む』

中山 康雄『時間論の構築』


アウグスティヌスの時間論

アウグスティヌスは、「神は天地の創造以前には何をなされたか 」と問う人の異論への答えとして、神による世界の創造を説明するために、時間についての考察を行った。哲学者というより神学者であったアウグスティヌスにとって、神にとっての時間と人間にとっての時間を区別することが重要になる。彼は時間について探究していくうえで、大きく2つの課題にぶちあたった。まず第一に「時間の理解に関するもの」、第二は「時間の存在に関する問題」である。

まず、前者については、告白11巻14章 において「時間とは何かと問われると、何かはわかっているが、問われて説明しようとするとわからなくなる。」と書いている。時間が謎であると指摘し、内省により時間を探求しようとした。アウグスティヌスが念頭に置いているのは人類に共通するような時間というよりむしろ個人の体験している時間である点に特徴がみられる。

第二の「時間の存在に関する問題」に関して、アウグスティヌスは、「時間には、過去・現在・未来があることを私たちは知っている。この区分を考え出すと、時間の持つ特質な性格が浮かび上がってくる。」と『告白』に書いているように、人間の側から時間を描写するとき、一貫して時間を過去・現在・未来という相から考えているが、それは、運動を記述するための枠組みとして時間をとらえていたアリストテレスの時代にはなかった、時間論のあたらしい視点が、アウグスティヌスによって提供された。

彼は、永遠である神は、時間という枠組みの外にいるという考えから、神がある時点で世界を作ったことを否定する。神は世界を作る際に時間も一緒に作ったと考えた。そのため、時間は時間の中に存在する人間にだけ属する。彼は人間が体験する時間として、神と区別して考察した。
『告白』11章ではアウグスティヌスの時間論が書かれており、彼は時間について、過去や未来は存在しないと述べている。
「過去は過ぎ去ってしまったもので、未来はまだ来ていないもの。過去は過ぎ去ることなくいつも現在であり、すなわち永遠であることを意味している。現在は延長がなく、瞬間でしかない。」とあるように、アウグスティヌスは、過去や未来の話をすべて現在の話に還元しようとした。
「過去は記憶の働きによって、現在は注意の働きにより、未来は期待の働きによって私たちは経験される。」と告白に書いているとおり、過去はすでに存在せず、未来はまだ存在しない。「私が現在体験している、すべてのものはただ現在としてのみ存在する」という現在の時間・出来事しか存在しないという考えは、複数の問題をはらんでいる。

「私の過去」「私の現在」「私の未来」のことをアウグスティヌスが考えており、彼が念頭に置いているのが「体験の時間」「私にとっての現在」であり、時間の問題を「私の中で時間がいかに体験されるか」という問題にすり替えて考えている点に問題がある。彼の言うように「現在」しか存在しないならば、私たちが頻繁に語る過去や未来は何を指しているのか、「現在」が瞬間であるならば、「現在○○が起こっている」といった場合は、何を指しているのか。彼は時間を人間の記憶や直観や期待という心的能力のうちにある内部時間と同一視して考えているところに、アウグスティヌスの時間論の問題点がある。
アウグスティヌスは時間的な存在と、空間的な存在を同じようにかんがえ、まだ存在しないものは存在しない。もう存在しないものは存在しない。すなわち、存在する=ある時刻に存在するということを同じように考えていた。
アウグスティヌスは「時間の現在主義」を明確に主張した哲学者であり、人間の内部時間という視点を新たに持ち込んだ点は評価されている。アウグスティヌスは現在のみ「存在する」と考えたが、彼の言う「存在」は時間的な意味合いだけでなく、空間的な意味合いが含まれている。しかし、時間的な存在と空間的な存在をまったく同じように考えることは矛盾が発生する場合がある。


次は

科学における時間論「絶対時間と関係的時間」(ニュートンとライプニッツ論争)

あげたいとおもいます

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